赤外線フィルムについて

B&W Infrared film 820nm

2011-09-19

はじめての赤外線撮影について

efke社のIR820についての簡単なテストと赤外線表現の方法を探ってみました。2011年現在、数社フィルムメーカーから近赤外域のフィルムが市販されているようです。入手しやすいIR820を試してみます。

テクニカルデータやアカデミックな内容ではありません。
数値等は補償できるものではなく、あくまでも個人の主観による考察です。何か参考になればと思います。

可視光線の外側
モノクロフィルムのコントラスト調整用に黄色やオレンジ色のシャープカット(SC)やバンドパス(BP)を用いますが、今回の赤外フィルムは波長の短い青い光から820nm辺りまで感光するよう設計されてますので、可視光線の帯域をカットする必要があります。(カットしなければ通常のパンクロフィルムとほとんど変りません)
そこでカットフィルターを使用します。コダック社#88A(715nm),#89B(695nm),fuji IR72.76等あります。
カットフィルターとフィルムの赤外線感度特性は写真表現に直接反映されるので非常に重要なことです。いろいろありますの調べてみてください。
イメージ図.jpg

フィルム撮影の問題点
1.フィルムの感度はどうなるのか?
2.赤外線の焦点移動はどれだけか?
はじめての1回テストだけでは全くデータ不足ですが、ある程度の条件がそろえば問題なさそうです。
条件とは、レンズの種類(収差補正、画角)・赤外線量(撮影時)・フィルムの赤外線感度などですが個人的にはハイライト側のフレアーであったり、微妙な収差によるボケや露光時間による被写体の揺らぎが表現につながると思います。まだ撮影していませんがテーブルトップの静物では相当な焦点移動が問題となりそうです。

Infrared Efke IR820 / IR760 Film Efke IR820
Format 6x7
Lenz Nikon SW65mm
Filter IR76(Fuji film)
Dev D76 20℃ 8分 
※データスキャンしたものでプリント出力ではありません

1.フィルムの実効感度
IR820に限った事ではないのですが赤外線フィルムには正確な感度指示はありません。(普通のフィルムとしての感度はISO100です)なぜなら使用するカットフィルターの番手、撮影時の赤外線量に影響を受けるからです、仮に撮影用露光メーターでカットフィルターがプラス5ev露光の指示であっても意味を持ちません。NDフィルターやSCフィルターのように係数で計算できると良いのですが、、、。
詳しくは知りませんがメータは可視光域の中間域をピークに設計されているので赤外は測定できないようです。
今回はメーカーのデータシートから760nmフィルター使用でISO6をテキに+1+2の段階露光で撮影してみました。

Efke IR820 Negaテキと+1のネガをデータスキャン D76原液 20度8分 タンク現像
ネガ濃度は好みの部分ありますがISO6を標準として良いと思います。(760nmでカットして)
光線状態は順・斜光(9/15_17時)で測光方法は入斜光でカットなし(ポン出し)出た目の半段開けを適正露光にしてます。(f32 4秒)
ネガフィルムを複写したものなのでモニター画面では判断できませんが、1コマ目でプリント可能だと思います。(現像液はD76を使用)

2.焦点移動
焦点距離の移動については、通常のピント位置より少し前方に合わせる程度しか知識がありません。どの程度フランジを伸ばすかはレンズのミリ数と近赤外域の収差補正がどの程度補正されているかにより変るようです。(普通のレンズ自体は近赤外線は通しますが赤外線付近の色収差補正は保証されていません。また、色収差は絞り込んでも良くなることはありません。

デジタルカメラであれば760nmの黒フィルターであってもAF機能は働きますが、距離補正マーク(R)無しレンズや無限遠の無い大型レンズではやっかいです。

今回は比較的短いレンズを使用したので焦点深度に入っているので結果を判断するものはありませんが、標準レンズで少し前ピンにする程度で広角レンズは絞り込めば不要だと思います。

3.デジタルグレースケールとの比較
フィルムホルダーの関係でアナログでの比較はできませんでしたが、デジタルカメラにも少しは赤外線が入ってきてるようです。
フィルム撮影/下左   6x12のフォーマット
デジタル/下右3コマ   35比率から切り出しグレースケールに変換したものです。(レンズは違います)

Infrared IR820 とCanon 5D

特に気になったのが、フィルム上のB部分で意外にネガ濃度があったことです。Aの部分は太陽光が直射し、またクロロフィル効果で相当な明るさになると想像できましたが、シャドー側の葉も予想以上にかなり明るく表現されていました。また、C部分の淡いブルータイルは空と同等まで暗くなると予想しましたがこれもまた明るくでています。
デジタルはカメラは赤外線をブロックするフィルターがセットされて、機種によりますがかなり低感度です。(この機種の場合、IR820フィルムに対しておおよそ+5evくらいでした)

4.追記/新旧デジタルカメラの赤外線感度
3機種共に素子サイズ・画素数が違いますが、旧機種はISO200でフィルム露出レベルの濃度を出せましたが、最近のモデルではかなり赤外線をカットしています。もちろん通常撮影ではブロッキングフィルターは必要です。(レンズ前で760nmでカットし、さらに撮影素子前で長い波長をブロックされるので素子には光が届かず非常に低感度になります)
D1 5D 5Dmk2フォーカス甘いです、特に右カットは!



IR820で撮影してみようと思う人のために。
1.露光・現像液のトーンやコントラストに問題なく、もし赤外イメージが違った場合まずカットフィルターで
 調整してみてください。その後に赤外フィルムを変えることをお薦めします。
2.120ロールでもフィルムの装填はできる限り暗所で。
3.角フィルター使用時にアダプターからの光線もれは無い様に。
4.フィルム定着液は硬膜処理した方が良いです。(乳剤面は非常にデリケート)

つたないレポートですが最後まで読んでいただいて、  ありがとうございます
コントラスト高く、光は散乱し、動くモノは流る。そんな世界を覗いてみよう。2011.09.15


5D_IR820 filter

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